外壁塗装のやり方には、いくつか種類があります。刷毛やローラーを使う「手塗り」が最近では定番になっていますが、外壁塗装には「吹き付け塗装」という方法も存在します。じつはこの吹き付け塗装はひと昔前まではよく採用されていた施工方法だったのですが、現在では、取り入れるところは少なくなってきました。
吹き付け塗装が気になっているけれど、どんなものかわからない、といった方もいることでしょう。当記事では、吹き付け塗装とはどのような施工なのかということをはじめ、メリットとデメリットについても紹介していきます。外壁の吹き付け塗装を検討されている方はぜひ、参考にしてみてください。
目次
外壁の吹き付け塗装とは?
名前のとおり吹き付け塗装というのは、特殊な道具を使って塗料を外壁に吹き付けていく塗装法です。まずは外壁の吹き付け塗装の特徴についてご説明していきます。
スプレーガンを使って塗装する
吹き付け塗装は「スプレーガン」とよばれる特殊な道具に塗料を入れて外壁に塗料を噴霧していく方法です。このスプレーガンには2種類あって、ひとつは「エアスプレーガン」といい、空気を圧縮して塗料を噴霧するスプレーガンです。もうひとつは塗料自体に圧をかけて噴霧する「エアレススプレーガン」です。
エアスプレーガンは一度に広範囲の塗装することができるのがメリットですが、それだけ大量の塗料を使うため費用が高くなってしまうのです。また、噴射の範囲が広くなりすぎて余計なところも塗装してしまうことがあります。
このような問題があることから、現在では、エアスプレーガンよりも少し塗装範囲の劣るエアレススプレーガンを使用するのが主流のようです。
吹き付け塗装の施工方法は主に2種類
吹き付け塗装に使用するスプレーガンには上記の2種類があります。さらに吹き付け塗装は外壁の素材によって施工方法が分かれてくるのです。では、その施工方法についてご説明していきます。
【リシンやスタッコとよばれる仕上げ材を使う方法】
まずは、リシン、スコッタという仕上げ材を使用した施工方法についてご紹介します。この方法は、はじめに「シーラー」とよばれる下塗り塗料を外壁に吹き付けたあとに、仕上げの吹き付けをおこなう方法です。
リシンを使用する場合は、塗料の中に細かい石を含めて仕上げをおこないます。スコッタを使用する場合は、石灰に砂や大理石を混ぜたものを使用します。リシンやスコッタに石材を入れる理由は、石材を塗料に絡めることで強度を上げるためです。そのため、どちらも仕上がりはざらざらとした外壁になります。
【タイル吹き仕上げとよばれる方法】
タイル吹き仕上げというのは、モルタル外壁を仕上げる際におこなわれる方法のひとつです。この施工法に用いる塗料は「複層仕上塗料」とよばれるもので、劣化によるひび割れを防止するために外壁に3回塗り重ねていきます。塗料に大理石や砂などの骨材を使用していないので、比較的なめらかな仕上がりとなります。
吹き付け塗装のメリット
以上が吹き付け塗装の方法ですが、いったいどのような特徴があるのでしょうか。まずは吹き付け塗装のメリットについて紹介していきます。
仕上がりが美しい
吹き付け塗装の大きな魅力は、仕上がりが美しいことです。均一に塗装することもできれば、吹き付けの圧を変更することで、外壁に模様をつけることも可能です。
施工時間が短い
一度に広範囲を塗装できる吹き付け塗装は、職人が丁寧にローラーなどを使用する手塗りよりも3倍ほどの時間短縮ができるといわれています。施工にあまり時間をかけたくない方にはおすすめです。
狭い場所も施工することができる
手塗りの場合は狭いところや高いところを塗装する際にも塗料缶を近くに置いておかなければいけません。狭い場所を塗装する場合は塗料缶の持ち運びが困難で施工時間がかかってしまうこともあるでしょう。さらに、手塗りでは、小さな隙間に刷毛やローラーが入らず、塗装ができないこともあります。
それに比べて吹き付け塗装はスプレーガン1つで塗装ができるので、狭い場所の塗装もスムーズにおこなうことが可能です。その上、刷毛やローラーが入らない狭い隙間の塗装も簡単におこなうこともできるのです。
一方で吹き付け塗装にはデメリットも…
たくさんのメリットがある吹き付け塗装。しかしやはり近年あまり採用されない方法であるために、デメリットもいくつかあります。ここでは吹き付け塗装のデメリットをご紹介していきます。
塗料の消費が多い
スプレーガンを使用する吹き付け塗装は手塗りに比べると、塗装の際にどうしても塗料が空気中に舞ってしまいます。塗料の使用量は手塗りに比べると20%ほど増加しているそうです。
また、住宅が密接している地域では近所に塗料が飛び散ってしまうかもしれません。こういったところでは近隣にかかる迷惑のこともあるので、立地によっては吹き付け塗装がおすすめできない場合があります。
養生に手間がかかる
吹き付け塗装は一度に広範囲を塗装できますが、その分目的以外のところに塗料が飛び散りやすいのです。ですから、手塗りのときと比べると、養生(目的以外のところに塗料が付かないように保護すること)の範囲が広くなってしまいます。
塗装が難しく技術が必要
一見簡単そうな吹き付け塗装ですが、じつはそれなりに技術が要求されます。塗装の際には、一定のスピードと安定した動きでスプレーガンを使用しないと、仕上がりにムラなどができてしまいます。十分に技術のない職人が吹き付け塗装をおこなうと本来の持ち味である仕上がりの美しさが台無しになることもあります。
以上のようなデメリットがあることから近年では吹き付け塗装を避ける業者が増えてきています。このようなことが気になる方は手塗り塗装もおすすめです。次はそんな方のために手塗り塗装のことについてご説明していきます。
「手塗り塗装」もおすすめ
手塗り塗装は吹き付け塗装と比べると時間がかかりますが、デメリットが少ないです。ここでは以下に手塗り塗装の方法とメリット、デメリットについて記しておくので、参考にしてみてください。
ローラーを使う方法
【メリット】
刷毛を使った手塗りの半分の時間で塗装でき、刷毛よりも塗料が飛び散らないことがローラーを使うことのメリットです。住居が密接している地域でも安全に作業することができます。
【デメリット】
手入れされていないローラーや劣化しているローラーを使用すると、塗装中に毛が抜けて外壁の中に毛が紛れてしまうことがあったり、気泡が入ったりすることがあります。
刷毛を使う方法
【メリット】
塗料が飛び散りにくく、ローラーでは塗装できない狭いところや複雑な形状の外壁も塗装することができます。
【デメリット】
塗装に時間がかかってしまい、広く平な外壁を塗装するのには向いていません。業者に依頼する場合は施工に時間がかかると、それだけ費用も高くなってしまいます。刷毛とローラーを使い分けて短時間で塗装してもらうように相談するとよいでしょう。
外壁塗装を依頼する前に確認しておきたいこと
外壁塗装を依頼する前にしっかりと確認しておきたいことは、しっかりと塗装をおこなってくれる業者なのか、ということや費用の相場のことです。安くても仕上がりが悪くて払った費用を無駄にしたといっても過言ではありません。ここでは、外壁塗装を依頼する前に確認しておきたいことについてお話ししていきます。
業者には基準塗布量を必ず守ってもらう
使用する塗料の量が少ないと美しい外壁を塗装することはできません。じつは塗料には「基準塗布量」というものが定められており、これは「塗料1缶あたりどれくらいの面積塗ると、性能を保つことができる」という基準量です。
業者に塗装をしてもらう前に相見積りを取って、使用する塗料の量を確認しておきましょう。その中でも塗料を多く使用する業者に依頼すると、美しい外壁塗装をしてもらえるでしょう。
外壁塗装工事の費用相場を知っておく
しっかりとした塗装をしてもらうためには塗料缶の量を把握しておくことも大切ですが、施工の費用の相場について知っておくことも重要なポイントです。安心して業者に依頼するための判断材料となるでしょう。
使う塗料の種類や業者によって費用の変動はありますが、吹き付け塗装の費用相場は1平方メートルあたり、1,000円~2,000円ほどだといわれています。手塗りの塗装の場合だと、3,000円~5,000円くらいが相場です。
このように同じ外壁塗装をするにも塗装の方法で費用が異なってくるので、それぞれの塗装法のメリット、デメリット、費用を確認した上で、自分が一番納得できる方法で塗装をしてもらうとよいでしょう。
外壁塗装を検討しているならまずは相談してみましょう
吹き付け塗装には多くのメリットがありますが、デメリットの数も多いことから近年では避ける業者も増えてきています。しかし、吹き付け塗装でないと演出できないよさもあるので、吹き付け塗装を検討している方は、依頼する前にしっかりと業者と相談することをおすすめします。
信頼できる業者を見つけたいのであれば、業者のホームページを参考にしてみたり、口コミで評判のよいところに相談してみたりするとよいでしょう。また、自分で業者を探すことに自信のない方は、業者を紹介してくれる会社に相談してみるのもよい手段です。
まとめ
吹き付け塗装には特有のメリットがありますが、デメリットもまた多く存在します。吹き付け塗装のデメリットが気になる方は手塗りの外壁塗装という手段もあるので検討してみてください。どうしても吹き付け塗装をおこないたいという方は依頼する前には業者としっかりと話し合うことをおすすめします。
信頼できる業者はホームページや口コミを参考にしたり、業者を紹介してくれる会社に相談したりすることで見つけることができます。自分に合った塗装法で満足できる外壁にしてもらうことが一番です。