外壁塗装には、下地処理が欠かせません。というのも、この作業をおこなわずに塗装をしてしまうと、すぐに塗料が剥がれ落ちてしまうからです。これでは、外観がさらに悪化してしまうおそれがあります。
ここでは、そんな外壁塗装の仕上がりに多大な影響を与える「下地処理」を自分でおこなう方法をご紹介します。今までやり方がわからなかった方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
外壁には下地処理が欠かせない!
下地の具多的な処理方法をご紹介する前に、まずは下地処理の必要性についてもう少し掘り下げます。下地処理の必要性を知っている状態とそうでない状態とでは、作業への身の入り方が違います。一度、下記に目を通してみてください。
下地処理とは
下地処理とは、一言でいうと「塗料を塗る前にしておくべき作業の総称」です。たとえば、
外壁の汚れをあらかじめ落としておくことや、ひび割れを補修しておくことがそれに該当します。
こういったものを放っておいたまま塗料を塗ってしまうと、すぐに剥がれ落ちてしまいます。なぜなら、このような汚れやひび割れが原因で塗料が外壁に密着できていないからです。このようなトラブルをなくすためにも、下地処理は重要といえます。
下地処理をしないと悲惨なことに……
下地処理を怠ると、外壁塗装後に泡のような膨らみが大量に発生してしまい、外観が悪くなってしまうケースがあります。ほかにも仕上がりに色ムラが発生することや、外壁と塗装の間に発生した部分に水が入り込み、その部分が腐食することも考えられます。
これでは、わざわざ時間と費用をかけて外壁塗装を施した意味がありません。塗装を有意義なものにするためにも、「下地処理」は必須なのです。
【基本編】下地処理でおこなう3つのこと
下地処理には、さまざまな作業があります。ここでは、そのなかでも基本的な作業を3つご紹介します。
サビや剥がれている塗膜の除去
サビを取り除く際は、熱したお酢でサビついている箇所を磨くと、サビが落ちやすいです。これは、お酢に含まれる酸によって鉄が溶け、そのときに表面上のサビも一緒に落ちるからです。そのため、サビ落としの際はお酢を用いるとよいでしょう。
また、剥がれている塗膜を除去するときは、研磨紙や丈夫な布などで軽く磨くとよいです。これなら簡単に塗膜を落とせることでしょう。しかし、ここでひとつ注意点があります。あまりにも研磨紙で同じところを磨きすぎると、その部分が凹んでしまい、結局隙間が発生してしまうことがあります。
塗膜の除去の目的は、外壁と塗料の間に隙間をつくらないことです。そのため、研磨紙で外壁を磨く際は、磨きすぎないように注意してください。
高圧洗浄と脱脂作業
外壁には日常の雨風などの影響により、付着した汚れだけでなく、コケやカビが発生している場合があります。こういったものを取り除くために、高圧洗浄作業をおこなう必要があります。高圧洗浄をする際は、ホームセンターで販売されている機器を使うとよいでしょう。
また、汚れやカビだけでなく、塗料をはじく油分も取り除く必要があります。この場合は、その個所を弱アルカリ性洗剤で水洗い、もしくはお湯洗いで取り除きましょう。
その後、乾いていない状態で塗装をおこなうと、色ムラができてしまいます。そのため、塗料を塗る際は塗布面をしっかり乾燥させてください。
ひび割れの補修
一口にひび割れの補修といっても、割れの大きさや深さによって対処法は変わります。たとえば、ひび割れが小さい場合は粉末状のコンクリートやパテを注入するだけで済みます。
しかし、ひび割れが大きいケースですと、本格的な作業が必要です。まず、電動工具でひび割れ部分をカットし、内部の汚れを除去します。その後、下塗り剤とシーリング材を注入するといった方法です。
こうして文面で見ると簡単そうですが、クラック部分に沿って下塗り剤やシーリング材を外壁にしっかりと密着させることは難しい作業といえます。なぜなら、見ただけではキチンと密着できているかどうかの判断がしづらいからです。
構造クラックが発生しているときは、無理して自分で作業をおこなうのではなく、一度プロに相談をしてみましょう。
【実践編】仕上げ材別の下地処理方法
外壁の下地や部位によって、施すべき作業の内容は異なります。そのため、ここでは外壁の種類別に処理方法をご紹介していきます。
サイディングの場合
サイディングとは、建物の外壁に貼る、仕上げ用の板材のことです。サイディングはコストパフォーマンスが高く、耐久性に優れています。しかし、その一方で板と板のつなぎ目にある「シーリング材」が劣化しやすく、そこからひび割れが発生するケースが見受けられることがあります。また、板材本体にひびが入ることもあるのです。
ここでは、それぞれのケースに対する対処法をご紹介します。
板本体のひび割れの場合
板本体のひび割れを修復する場合は、下のような手順になります。
1、ひび割れ部分を清掃する
カッターでひび割れ部分を少し掘ります。次に、その部分の汚れを取り除くために、刷毛を用いてキレイに清掃します。
2、プライマーを塗布する
プライマーとは、下塗り剤のことです。これを使うことにより、シーリングと下地との接着力を高めることができます。このプライマーをひび割れ部分に塗布しましょう。
3、ひび割れ部分にシーリングを充填する。
ひび割れ部分にシーリングを充填し、ひび割れ部分を埋めていきます。充填した後はヘラを使い、シーリングの表面が平らになるように成形します。このときも、シーリングをひび割れの奥の部分に密着させることを意識して作業してください。
4、モルタルで表面を埋める
シーリングを塗った箇所をモルタル(セメント・砂・水を練り合わせたもの)で埋め戻し、平らな仕上がりにします。その後に塗装で保護し、完了です。
シーリング材にひびが入っている場合
シーリング材にひび割れが発生している場合は、以下の流れになります。
1、シーリングを撤去する
カッターやペンチなどを使って、ひびの入ったシーリング材を取り除きます。このとき、傷んでいる部分のみならず、すべてのシーリング材を取り除きます。
2、養生シートを貼り、プライマーを塗布する
養生テープを、シーリングに接している板の部分に貼り付けます。こうすることにより、次の作業である「シーリングの充填」の際、はみだしを防ぐことができます。養生シートを貼った後は、プライマーを塗布しましょう。
3、つなぎ目部分にシーリングを充填する
次は、シーリングをつなぎ目部分に流し込みます。流し込んだ後は、ヘラなどで表面が平坦になるよう調整していきます。また、シーリング内部に隙間ができないように、密着を意識して伸ばしていきましょう。
モルタルの場合
モルタルは地盤の揺れなどで基材が割れやすいといった性質を持っており、ひび割れ・剥がれなどの症状が多いです。
仕上げ材がモルタルでヘアークラックが発生している場合、まず補修部分の汚れや油分を落とし、しっかり乾燥させます。次にひび割れとその周囲に防水スプレーを吹き付けます。このとき、吹き付け箇所が濡れるぐらい、たっぷりと吹きかけてください。スプレーが完全に乾いたら塗装を始めましょう。
また、ひび割れが大きい場合は、汚れを落として乾燥させた後、ドライバーなどの細長い棒状のもので中を削り取り、きれいにしてください。その後、ひび割れ部分に充填剤を塗り付け、ヘラなどで伸ばし平坦にします。そして、しっかりと乾燥させた後に塗装をおこないます。
もし、壁そのものが剥がれてしまっているときや、ひび割れ付近の壁が浮いてしまっているときは、本格的な補修工事が必要です。そのときは、作業にとりかかる前に、業者に一度話を聞いてもらいましょう。
【実践編】部位別の下地処理方法
次は、対象の材質が「鉄」もしくは「木材」である場合の、下地処理方法を記載していきます。どちらの材質であるかによって対処方法は大きく変わってきます。
鉄部におこなう場合
鉄部に下地処理をおこなう場合は以下のような流れです。
1、汚れ・油分の除去
刷毛やブラシなどで汚れをしっかりと取り除きます。また、油分は弱アルカリ洗剤を用いて、水洗いもしくはお湯洗いで洗い流しましょう。また、ここで高圧洗浄機を使用することも可能です。できる範囲でかまいませんので、汚れをできる限り落としてください。
ここで汚れと油分を可能な限り取り除いておけば、後の「ケレン作業」が楽になります。汚れと油分を取り除いたら、その後はしっかりと乾燥させます。1~2時間ほど放置した後、布などで水分を拭き取ります。
2、サビを落とす
サビを落とす際は、既述したようにお酢を用いてしっかりと除去しましょう。除去した後はお酢をキチンと洗い流し、対象箇所を同じ方法で乾燥させます。
3、ケレン作業で落としきれていない汚れ・サビを取り除く
ケレン作業とは「外壁の遺物を取り除く作業」のことです。別名「素地調整」とも呼ばれます。この作業では、電気工具を使って、ブラシやお酢などで落としきれなかった汚れやサビおよび、旧塗膜を落としていきます。汚れや旧塗膜を落とす作業は、このケレン作業で最後になります。そのため、この段階では汚れやサビがしっかりと取り除かれた状態にしておきましょう。
4、目粗しで鉄部の表面を傷つける
鉄部の表面を研磨紙などで傷つけることによって、鉄部と塗料の密着性を向上させます。先ほどのケレン作業とこの目粗しのでき具合で、塗装が長持ちするかしないかが決まります。鉄部の下地処理は、これで完了です。
鉄部では主に、サビを取り除く作業がメインになります。なぜなら、このサビを取り除かずにそのまま塗装をおこなった場合、サビは塗装の下で成長を続け、やがては塗装を破る危険性があるからです。
ほかにも、塗装の耐久性を落としたり、施工直後に「塗膜剥離」が発生するおそれがあります。このような事態を防ぐためにも、サビ落としはしっかりとおこないましょう。
木部におこなう場合
1、汚れの除去
木部を傷つけないように、注意しながら汚れを取り除きます。ここでも刷毛やブラシを使うとよいでしょう。
2、ヤニの処理
ヤニはドライバーなどで削り取ります。ヤニが多い場合は揮発油などで拭き取ります。ヤニをそのまま放置しておくと、木部がべたついてしまい、塗装の仕上がりに色ムラなどを招くおそれがあります。そのため、ヤニもしっかりと取り除きましょう。
3、ケレン作業で表面を平らにする
木部の角や面を過剰に丸めないように注意しながら、紙やすりなどの研磨紙で、表面を平らにならしていきます。木部が非常に硬い材質で研磨紙では磨けない場合、鉄部同様に電気工具を用いましょう。
ただし、木部は鉄部に比べると磨きやすい材質です。ですので、鉄部のときと同じ要領で作業を進めてしまうと、ついつい木部を磨きすぎてしまうことがあります。磨きすぎには注意しましょう。
4、目粗しで表面を軽く傷つける
鉄部同様、ヤスリなどで木部の表面を傷つけていきます。木部の下地処理は、これで終了です。
木材は、膨張と伸縮を繰りかえす性質を持っています。この働きによって、木部に接している塗装は少しづつ剥がれたり、ひびが入ったりします。また、木部の上に塗った塗装は、基本的に長持ちしません。モルタルやサイディングの寿命と比べて、その半分ほどしかないといわれています。
ですので、木部へ塗装をおこなう場合は、下地処理がさらに重要となります。外壁塗装をより長持ちさせるためにも、下地処理をしっかりとおこないましょう。
外壁の下地処理の費用相場
ここまでは、自分で下地処理おこなう際の方法を記載してきました。しかし、自分でおこなうにはどうしても限界があります。「この作業は自分には難しいかも……。」と思ったときは、一度プロに相談をしてみましょう。
以下に、作業内容が難しいものや道具を持ち合わせていない場合が多い作業をプロに依頼した際の相場価格を記載しました。しかし、下地処理の相場は、クラックの深さや材質の劣化具合によって費用が変化するため、少し複雑です。ですので、ここでご紹介する数字は、あくまでも目安として参考にしてみてください。
- ・クラックの幅、深さ0.05~2.5㎜未満 約1,500~2,300円/㎡
- ・クラックの幅、深さ2.5~15㎜未満 約1,200~2,500円/㎡
- ・クラックの幅、深さ15㎜以上 約3,000~4,500円/㎡
- ・高圧洗浄 約100~300円/㎡
- ・バイオ洗浄 約200~700円/㎡
- ・ケレン作業、軽度のサビ 約600~1,000円/㎡
- ・ケレン作業、重度のサビ 約2,000~3,000円/㎡
- ・シーリング 約850~1,800円/㎡
各下地処理作業の相場費用は、上記のような金額になっています。依頼先の業者によっても金額は変動するので、一度業者に相談をしてみましょう。
施工は業者依頼がおすすめです
外壁の下地処理は、簡単なものであればDIYでおこなうことも可能です。しかし、確実性や出来栄えを考えるのであれば、やはり業者に依頼するのが得策といえるでしょう。ここで、業者を選定する際はどこに注目するべきなのかを確認していきましょう。
自分でやると失敗してしまうかも……
一般的に、外壁塗装の出来栄えは下地処理で決まるといわれています。ですので、下地処理がうまくいっていない状態で品質の高い塗料を塗っても、その効果は激減してしまいます。
自分で下地処理をおこなった際に「なんかイメージ通りにいかないな。」「思ったよりも難しい……。」と感じたときは、その作業だけでもプロに相談をしてみてください。プロであれば経験が豊富で知識も持ち合わせていますので、質の高い作業をおこなってくれます。それだけでなく、きっと有益なアドバイスももらえることでしょう。
賢い業者の選び方
業者を選ぶ際のポイントは2つあります。ひとつは、その業者の実績を見ることです。実績が豊富ということは経験が豊富ということです。現場経験の多い業者はスキルも高いので、安心して作業を依頼することができます。
ふたつ目は、スタッフの対応が丁寧であることです。とくに、「事前説明」がしっかりしているかをチェックしてみてください。事前説明をしっかりとおこなってくれる業者は、自分たちのおこなう作業に自信があることを示します。また、こちらの質問にもしっかりと答えてくれる業者であれば、安心して依頼することにもつながります。
まとめ
外壁塗装の下地処理は、塗装の仕上がりを左右するとても重要な作業です。さらに、簡単にやり直せる作業ではないので、慎重さも必要になります。こういった作業を経験や知識のない人がおこなうことは、少しハードルが高いといえるでしょう。
作業中に少しでも不安や迷いを感じたときは、業者に相談だけでもしてみてください。業者によっては、作業別に請け負っている会社もあります。ですので、自分には難しい作業にぶつかったときは、その作業だけを依頼するというのも、ひとつの方法です。